essay / 湖畔の思索日誌
2026-04-23 10:50:00
旅と石鹸
旅先で必ず買うものがある。
訪れたその土地で作られている石鹸だ。
気に入った香りやその土地ならではの素材のものを、その時の旅の気分で選ぶ。
そして旅から帰っても、すぐには使わない。
今使っているのは、一年前にパリでふらりと立ち寄った石鹸屋さんで求めたものだ。
朝、寝ぼけた顔をぬらし、石鹸を手に取り泡立て、その両手で顔を包むたびに
アプリコットの香りと、あのときの旅の情景に満たされる。
石鹸がとけてきえるまで旅の余韻はつづき、
石鹸がとけてきえるころ、次の旅の余韻がまたはじまる。
いつかの朝は、インドのニームの香りに満たされているのだろう。
旅を終えてもゆるやかに届く波紋のように、日常のなかにそんないとまを持ちたい。
それには石鹸くらいの存在が、私にはとてもちょうど良いのだ。
