essay / 湖畔の思索日誌
2025-09-08 14:05:00
喧噪の中の静けさ
インドは二度訪れた。21才の時と、26才の時だ。
初めての海外がインドだった。大学の仏教遺跡研修で北インドに2週間。
その時にまた来ようと心に誓い、26才の時に南インドから北インドへ半年ほど旅をした。
日本とは何もかにもが違うけれど一番衝撃を受けたのは、音だった。それはボリュームだけの話ではなく音の種類の多様さにも驚いたのだった。
車やオートリクシャーのクラクション、客引きや物売り、物乞いの声、ヒンズーの祈りの歌、プージャの儀式、どこからか聞こえるインド音楽、人々のおしゃべり、チャイの素焼きのコップが割れる音、洗濯や沐浴の賑わい、とにかくあらゆる生活音が混沌と渦を巻く。
静けさを好む私にとって、これらの音を耳が受け入れるまでに少し時間が必要だったけれど、この音には人々の「生」が密接していて、人々の生きるエネルギーそのものなのだと感じるようになってからは、不思議なことに、喧噪の中にいるのに心地よい静けさを感じていた。
あの音が、私にとってのインドだ。
そして時々途方もなく、あの音の中に身を置きたくなるのだ。