essay / 湖畔の思索日誌

2025-08-13 12:13:00

トマトの香り

 

連日30度近い気温が続く。北海道の夏もずいぶん暑くなったものだ。

車の色が黒いことも相まって、日に照らされた車内はサウナのように熱い。

エアコンが効くまでに時間がかかるから、すべての窓を半開にして走る。(※全開は強すぎるので半開がちょうどよい)

なまぬるい風が最大風量で駆け巡りながらのドライブは、インドア属の私が感じられる数少ない「夏のアクティビティ」に等しい。

北海道らしい広大な畑がフロントガラスのみならず、全方位に広がる。

空と入道雲と山々、そして果てなく続く畑を眺めながら車を走らせていると、途中から風がふわっとトマトの香りになった。

運転していなければ目を閉じて感じたいくらい、これは絶対トマトだ。

 

パズルのピースが埋まるように、完璧な夏を感じた瞬間だった。

 

後部座席から「トマトのにおいがするね」と子の声がした。

「そうだね」と答える自分の中に、なんとも穏やかな喜びがあった。