essay / 湖畔の思索日誌

2025-07-05 17:04:00

Our Open Dialogue vol.2/ 振り返り対話会

Our Open Dialogue vol.1「アウシュヴィッツを訪ねて」の余韻が続くなか、

参加してくれた方から、さらに深める「振り返り会」をしたいとの嬉しいご提案をいただいて、

善は急げとばかりの早さで、その翌週にOur Open Dialogue vol.2「アウシュヴィッツを訪ねて/振り返り対話会」をひらいた。

 

第一回目は、アウシュヴィッツの旅の体験談も兼ねた対話会で、人数も多かったため、対話のキャッチボールの時間までは確保できなかったことが心残りだった。

なので第二回目は少人数制でひらいてみることに。

少人数ならこの店の中でもできるかもと思い、少しレイアウトを変えてみた。

「閉店後の思索室」というイメージで、店の閉店後に灯りを少し落とした静かな対話のための場所ができた。

16年以上店を続けていて、夜に店を使うことは初めてだったので、新鮮な、というか新たな空間としての使い方を見出せたことも嬉しかった。

 

この日、夜の思索室に集まった5人でゆっくりと向き合いながら、それぞれが前回の対話会を思い返していた。

そしてひとりが、言葉を発してくれた。

「戦争はいけない、平和が大切だと誰もが思っているのに、一歩家の外に出ると話しにくい空気感がある。例えば原発のことにしても戦争のことにしても、誰かと普通に話してみたいと思っているのに、なぜだかとても発しにくい。そんな風に過ごしていたから、こうして言葉に出しても良いのだと思える空間があってとても嬉しい。」

 

とてもわかる。その空気感は、私も確かに感じていた。

現在店で開催しているテーマイベント『Think Around Us vol.1/ 戦争がもたらすもの』は、その空気感を少しでも変えて、関心を寄せたり話したりするきっかけになるようにしたいと思い企画した。とはいえ、店のイベントに「戦争」という文字を入れることは、とても勇気のいることだった。きっと距離を取る人も多いだろう。

しかし同時に、こうしたテーマに対して実際どのような反応があるのかを知りたいという純粋な好奇心もあった。

そして、SNS(Instagram)では、とても興味深い結果が出ていた。

『Think Around Us vol.1/ 戦争がもたらすもの』に関連する投稿に対して、"いいね"の数こそ少ないけれど閲覧数が非常に高くなっていた。

「関心」「傍観」「沈黙」がInstagramによって見事に可視化されたわけだけど、いずれにしても興味を示してくれていることがわかったのは嬉しいことだ。

店舗では、「関心」を持つ人が、「来店」というひとつのアクションを起こしてくれているからか、お客さんと戦争について店内で"普通に"話せる機会が増えた。

 

そんな話を、私から対話会のメンバーにシェアをした。

そしてそこから、

言えない空気って、実際何なんだろうね。

世間にそう思われたくないっていうのは、私たちは具体的に誰に対して忖度してしまうんだろうか。

自分たちの親世代に、「政治と宗教の話はタブーだから、他の人としてはいけない」と言われて育ったことも、言いにくさに関係するのかもしれないね。

親世代は学生運動とか安保闘争とかをリアルタイムで経験しているから、余計そういうマインドになったのかもね。

と、さらに広がっていった。

 

今回の対話の流れの中で生まれた問いは、

・「言えない空気」って実際何なんだろう…

・SNSの情報と信憑性の精査はどうしてる?

・対立と分断の構造を変えていくには

・加害の立場になったときには

・「選択肢」と「選択の尊重」の理解とは

・無回答や無投票は意思表示になり得るのか

・思考力を育むには

など、次々と興味深いテーマが出てきて、あっという間の2時間だった。

 

前回も今回も感じたことは、「聞く」ことの重要性。

真剣に耳を傾けてくれる人がいるからこそ、一生懸命自分の言葉で伝えてみようと思えるのかもしれない。

 

対話会は、「聞く」練習であり、「伝える」練習でもある。

互いを認め合い、尊重し、共に学び合える場にしていきたい。

 

家族の団らんとも、友だち同士のおしゃべりとも少し違う、暮らしも仕事も趣味も異なる人たちが、同じ「問い」を囲んで対話をする特別な時間。

その後の余韻もまた、良き思索の種となるかもしれない。

今後もOur Open Dialogueは不定期でひらいていこうと思う。

 

今回初めて閉店後の店内でひらいた対話会は、小さな研究室のようでとても良かった。

当面は少人数制のこのスタイルで続けてみるつもりなので、心とタイミングが重なるときに、だれかと思索の時間を共有できると嬉しい。