essay / 湖畔の思索日誌
Our Open Dialogueのはじまり
私の店の新たな試みとして始めた、「Our Open Dialogue」。
一方通行の発信だけではなく、その日に集った人と共に考え合う対話の時間を持ってみたいと思い、立ち上げた。
そしてその一回目を、6月20日の世界難民の日に実施した。
今回は初回ということもあり、
現在店舗で開催しているイベント「Think Around Us vol.1/戦争がもたらすもの」のテーマに沿って
2月に訪問したポーランドのアウシュヴィッツ・ビルケナウ博物館の体験談を前半に、
そして後半は、ホロコーストの歴史の場である同博物館が掲げる「二度と繰り返さないために、私たちはどうしたらよいのか」という問いを囲み、
参加者13名とともに、それぞれの今の気持ちを言葉にする対話の時間として構成した。
私と、今回のトークパートナーである妹を含めて15人。
ひとつのテーマについて共に考え、それぞれの声に耳を傾け、自分の気持ちを言葉にしてみる、という時間は日常の中でほとんど無い。
その空気は、友達同士のおしゃべりとも、職場の同僚との会話とも、家族団らんの場とも違う。
顔見知りの人と初めましての人とが混ざり合い、少し緊張感も存在する。
私たちの共通点は、今日この日のテーマに何かしらの思いを感じてここにいる、ということだ。
対話会をひらくにあたり、共通のルールを設けた。
【Our Open Dialogue のルール】
- 耳を傾けてよく聞く
- 他の参加者の発言に対して、否定的な態度をとらない。(例:でも…、それは違うと思う、など否定や批判をしない)
- 発言せず、ただ聞いているだけでもOK。
- 知識や一般論ではなく、自分の言葉で話す。(専門的な言葉や著名人の言葉ではなく、自分の体験や感じたことを基に話す)
- わからなくなっても、話がまとまらなくてもいい。
- ひとつの正解を求めるのはなく、そこにある言葉に耳を傾ける。
この日のテーマは「二度と繰り返さないために、私たちはどうしたらよいのか」。
椅子の配置をゆるやかな楕円形にして、一人目の話者になるのはなかなか勇気がいると思い、まずは私からスタートした。
その後は自然と反時計回りに、これまでの自分の体験や人生と重ねながら、ひとりひとりが今の自分の言葉で、一生懸命語ってくれた。
ある人は、初めてのお給料で行った旅先の経験と重ねて。
ある人は、東日本大震災のボランティアの経験を通して。
ある人は、故郷が原爆投下の候補地だったから、その日晴れていたら自分は存在しなかったのかもしれないと。
今ここにある声に耳を傾けるということが、どんなに貴重であるか。それは想像を超えるものだった。
自分ひとりの思考だけでは到底たどり着けない15人15通りの言葉に、心が震えた。
未だ余韻とその後の思索が続いている。
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知るための入り口に立つこと
知ることも、自分の人生も大切にすること
自分の大切な人を守ること
今の場所でできることを考える
世界の人と交流し友だちになること
知らないでいる自分より、知っている自分でいること
平和な暮らしの手本を示すこと
映画はそこで終わりだけど、そうじゃないんだ
争いの時には負けるほうでいたい
許すこと
戦争に正当な理由を求めず、だめなものはだめだと言える気持ちを持つ
若い世代目線での非戦を広げていく
こういうことをオープンに話せる場がもっとあるといい
つらいことを経験したのに、同じことをなぜ他の人にしてしまうのか、わからないから考えていきたい。
善と悪はすべての人が持つ。そのことを自覚した上で、流されずに善の決断をすること。
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この日、ともに考え、素晴らしい言葉を聞かせてくれた皆さんに
心からの尊敬と感謝を。